A happy day+α
「はい、これ今回の補助券だよ。」
「ありがとうございます。これでちょうど10枚たまりましたよ。」
僕はおつりと一緒に貰った黄色い紙を財布の端に入れると、今日買った商品を受け取った。
「今回もいい物、狙ってるのかい?」
「別に狙ってる訳じゃないんですけど・・・」
苦笑しながら受け取った商品を持ち替えて、空いた手で頭をかくと店の女性は楽しそうに笑い始めた。
「ま、あたしとしちゃ今回の米1キロだけは残しといて欲しいもんだけどね。」
「努力します。それじゃぁまた・・・」
「まいどどうも!」
ぺこりと頭を下げて店を出ると、抽選会場となっている場所へと向かった。
町の入り口に小さなテントが張られていて、抽選はいつもそこで行われている。
まぁその抽選をしているその時期は案外短いんですけどね。
「どうもこんにちは。」
「あぁっ!八戒さん・・・。」
その場にいた人達が何故かガックリ肩を落としたのが見えた。
僕、来ちゃまずかったでしょうか?
「まだ一等出てないんですけど・・・出ちゃうんでしょうねぇ・・・」
はぁと言う大きなため息が聞こえ、抽選券の枚数を数えている人はが以前話していた「番町皿屋敷」のお岩さんのように、沈んだ声で枚数を数えている。
どうしてでしょう、何だか凄くこの場にいるのが悪い気がするのは・・・。
「・・・八戒さん・・・い、一回ですか?」
数え終わった男性が不思議そうな顔でこちらを見た。
テントの中にいた他の人達も驚いたように集まってくる。
「えぇ、今回は特に大きな買い物もありませんでしたので・・・それだけ。」
「そうですか・・・そうですか!じゃぁ一回まわしてください!もう勢い良く!!あははははっ♪」
「はぁ・・・」
その時ふと賞品の中のある一行に目が留まった。
先程店の女性が言っていた米1キロより2つ下に書かれている賞品。
ぼーっとそれを見つめながら係りの人に言われるままに一回抽選のハンドルを回した。
「・・・と行きたいですね。」
「八戒さん!おめでとうございます!!5等、ペアディナー券です!!」
カランカランと言う抽選会場で良く聞く鐘の音、それを聞きながら僕は笑顔で封筒に入ったその券を受け取った。
「ありがとうございます。」
「こちらこそありがとうございました!!」
なぜ係りの人達が涙を流しながら頭を下げているのか良く分からないが、とにかく今自分が一番欲しいものを手に入れられた僕は少し急ぎ足で家路についた。
この町では毎年ある期間ごとに福引が行われていた。
悟浄が一人で暮らしをしていた時には全く縁の無かった行事だが、八戒が悟浄の家に同居するようになってからは縁のある物となった。
一番初めは八戒の身の回りの品を揃えた為、かなりの回数の福引を悟浄と八戒が半分ずつ行った。
勿論二人で上位商品のほぼ全てを手に入れてしまったのは言うまでも無い。
それからは細々買い物をして八戒が抽選に来たが・・・確実に上位商品を手に入れて帰っていく。
これが店や抽選会場で渡されるクジならば、誰かが不正をしているのではと思うのだが、抽選は毎回よくあるハンドルを回して色のついたボールが出てくるタイプである。
誰かが八戒に取らせようとしてもそう何度も上手くいくものではない。
だからこの時期、八戒がここへ来るという事は・・・上位賞品が確実に彼の元へ行くと言う事になっていた。
でも、今回はたったの一度・・・しかも5等のペアディナー券のみ。
抽選会場にいた人達の喜びが大きかったのもしょうがない事であろう。
BACK
ただ単に八戒がペアディナー券をゲットする所が書きたかっただけ(笑)
だって八戒って絶対に抽選とかっておいしい商品だけ狙って取って行きそうじゃないですか!!
だから今回も回しながら「あー・・・あれ欲しいなぁ」と思っている物をゲットしたのですよ(笑)
毎回毎回妙な+αばかり思いついて申し訳ない(苦笑)
取り敢えずオマケって事で、笑って頂ければOKですv